市外研修「阿波の箱まわし」の歴史に学ぶ

 7月6日に、市外研修を実施し、36名で徳島県の阿波木偶(でこ)文化資料館「人形のムラ」を訪れました。

 徳島県西部では、阿波木偶(でこ)箱まわしという人形文化が受け継がれてきました。正月を迎えた人々の一年の幸せを祈る「三番叟まわし」「えびすまわし」「大国まわし」と、町回りをしながら人形浄瑠璃芝居を演じる娯楽芸「箱廻し」の2種があり、どちらも徳島県独特の伝統芸能です。しかし、1800年代は200人を数えた箱廻し芸人は、第2次大戦の頃に途絶え、戦後の街角では見れなくなりました。この郷土の誇る芸能が失われていった背景には、部落差別がありました。 私たちは、阿波木偶箱まわし保存会を立ち上げ、箱まわしの調査研究に尽力されている辻本一英さんから、地元のお年寄りから聞き取りをしたり、箱まわし芸人が訪れた場所を訪れたりして調査されたお話をお聴きしました。辻本さんの話から、箱まわしが地域のくらしにしっかり根付いていたことを強く感じるとともに、部落差別により「子や孫に背負わせたくない」という思いから、人形が川に流され伝統が途絶えていった歴史を聞きました。辻本さんたちの努力により、「人形のムラ」には350体ほどの人形が集められ、その貴重な人形を見学させていただきました。

 箱まわしの芸は、保存会メンバーで辻本さんの教え子の中内正子さん、南公代さんが師匠より引き継ぎ、現在は、四国を中心に1000軒ほどの門付けに訪問されているそうです。私たちも実際に「箱まわし」を鑑賞させていただき、最後には門付けの際と同様に人形に頭をなでていただいたり握手をさせていただき、「福」を授けていただきました。

 阿波木偶文化資料館「人形のムラ」の開館日は、2022年3月3日。日本初の人権宣言「水平社宣言100年」の記念の日にされたのには、辻本さんの熱い思いが込められています。